INDEX
SINGULIERとは何か
SINGULIER(サンギュリエ)とは「特異」という意味のフランス語のこと。
インターネット・コマーステクノロジーを手段とし、ブランドや商品に込められた本物の価値とセンスを掘り起こし、売り手と買い手の想いやこだわりを繋ぎ、持続可能な関係性を育むこと。
この間の掛け替えのない“特異な接点”を創出することこそがSINGULIERという言葉に込めた私達の使命です。
BACKGROUND 〜 背景
商店街専門店から大量販売店、インターネットによる電子商取引、そして・・・
かつて小売店というものは全て専門店でした。八百屋、魚屋、肉屋、惣菜屋、駄菓子屋、金物屋、靴屋、電気屋・・・そこでは、商品の購買だけではなく、その商品の使い方や応用、時には世間話にいたるまでのコミュニケーションがなされていました。お得意様には当然のように「おまけ」されてましたし、それは商店街の専門店も、一見さんお断りの敷居の高い高級店も同様でした。
しかし、便利と安価の追求は過剰化し、スーパーやディスカウントショップなどの大量販売店が出現しました。次第に購買の動機は、商品の深い知識やコミュニケーションやブランドストーリーを含めた全体的な評価ではなく、いかに安価か、に集中していきました。大量規格品だらけとなり、消費者の選択肢は狭まり、企業競争力は、いかに多くのロットを低コストで生産できるか、つまりいかに安く多く売るか、に力点が置かれるようになりました。そこでは資本力こそが力であり、全てでした。小売が「商売」から「ビジネス」へと移行した瞬間でした。
この大量販売店も店舗ないしカタログという販売チャネルしか持たない企業には陰りが見えてきました。インターネット上でさらに安価で多様な商品を販売する大型オンラインショップや、大型オンラインモールなどが登場し、さらには価格比較サイトなども登場して、店舗を持たず卸価格に近い価格で販売する業者なども簡単に買い手に発見されるようになりました。そうなると、大量販売店とはいえ店舗維持費や販促、人件費等の物理的なコストの圧縮に限界があり、安さに太刀打ちできない場合も多くなってきました。また、「ショールーミング(Showrooming)」(注1)という言葉に示されている通り、店舗は試着などのお試しやチェックのために利用されるようになり、実際の購入に関しては「後でネットで」というケースも増えていきました。現代人の可処分所得は可処分時間とますます反比例し、時間と場所の制約を超えたインターネットというツールを利用した販売チャネルはますますその重要度を増していきました。しかし、それでも競争力の図式は、価格競争以上でも以下でもなく、大量販売店もオンラインショップも変わりませんでした。
インターネットは安売りのイメージが色濃くなり、店舗に加えて折角オンラインの販売チャネルを用意しても、売れ残りや在庫処分品の販売所程度にしか使われず、店舗チャネルのオプションくらいの認識でしかありませんでした。昨今では、「オムニチャネル・リテイリング(Omni Channel Retailing)」(注2)という言葉が生まれ、顧客にとっては店舗もインターネットも電話もハガキもFAXも関係なく、自身にとって都合の良いタイミングと手段で欲しい商品を手に入れられればよいという当たり前のことが唱えられるようになりました。この流れと符号するように、オンライン対応は加速化し、昨今ではラグジュアリーブランドですらオンラインショップを充実させるようになりました。また、無料オンラインショップ開店ツールなども出回り、小規模店舗や個人ですらオンラインに軒を連ねるようになりました。
しかし、ブランドやサプライヤがいかにオムニチャネル化しようと、「安売り依存体質」や「実店舗 > ネット店舗という不等図式」は消え去りません。次第に、高付加価値な高価格帯商品をいかにインターネット上で販売するか、そういった商品の買い手にいかにファンになってもらいリピートしてもらうか、が小売の全体的な課題となっていきました。
- ショールーミングとは、リアルの小売店舗を実際の商品の確認のために使い、購入についてはオンラインショップで行うこと。
- オムニチャネルとは、実店舗やオンラインストアをはじめとするあらゆる販売チャネルや流通チャネルを統合すること、および、そうした統合販売チャネルの構築によってどのような販売チャネルからも同じように商品を購入できる環境を実現すること。
CORE PURPOSE 〜 何をやるのか
専門店 ☓ インターネット = 責任と信頼のオンラインショップの構築と育成
買い手に商品以上の価値を感じてもらうためには、売り手や取り扱いブランド自体をよく知り、好きになってもらわなければなりません。そこに登場したのが、「キュレーション・コマース」や、「ストーリー・コマース」ないし「メディア・コマース」などと呼ばれるオンラインショップの形態です。
「キュレーション・コマース」は、「ソーシャル・コマース」などとは異なり、「キュレーター(Curator)」(注1)を素人や単なる有名人ではなく、ブランドやサプライヤ、あるいはバイヤーなどのその道の“責任者”が担うことにより、「ストーリー・コマース」とほぼ同義になると私達は考えています。というのは、誰がいつどこでどのように、といったストーリー提案は具体的であればあるほどよく、それには提案者自体の経験と知見が色濃く反映されている必要があるからです。共感や説得力はそうでなければ生まれないと私たちは考えています。
このような提案者は責任を引き受ける者でなければなりません。責任とは相手に対して応答可能だということです。匿名者が無責任に評価を書き連ねる口コミサイトやSNSではなく、専門家が責任をもってブランドや商品説明と販売、サポートを行うこと、ただの接客ではなく、直接的には売るという目的のためでもなく、効果的な使い方やシーンを提案し、もっと深く知る手助けをすること。それはまるで、かつて商店街の“身近なプロたち”が当たり前のように繰り返してきた光景そのものではないでしょうか。八百屋や魚屋は旬を教え、野菜の料理方法まで顧客にアドバイスし、電気屋は家電製品の修理のついでに顧客の話し相手まで務めていました。彼らは買い手にとって、非常に身近で信頼できるプロでした。
実際、リアルでの身近なプロとのコミュニケーションは“信頼”を加速する装置でもありました。私達がインターネットではなく、リアルでの購買の方を信頼してしまうのは、“肌感覚的”な比重が大きいからです。つまり、実際の商品を見て触るというだけではなく、店舗やスタッフなどのリアルな存在とトータルに触れ合い、”確実にそこにある”、”何か問題があってもここに来ればいい”ということを信じやすくなるからです。しかし、現実には明日には消えてなくなっている可能性はゼロではありませんが、私達はそのようなことを通常疑わないでしょう。しかし、インターネットでの購買では、よく知らないサイトの場合、どうしても猜疑心がつきまとってしまうのではないでしょうか。クレジットカードも個人情報も登録したくはない方はまだ大勢いるかもしれません。
この逆風をオンラインショップは乗り越えなければなりません。インターネットという時間と場所を超えるツールがなければ、どんなに優れたモノやコトを作っていても、資本力がなければどうしても限られたエリアだけの販売になってしまいます。オンラインショップをリアルショップのオマケのように考えるのではなく、消費者にとっての平等で効果的な1チャネルとしてその社会的地位を向上させる必要があります。売り手が責任を持って自身を公開し、商品やブランド、その想いを伝え、雑誌のようにライフスタイルやシーン提案を行って、お客様と商品との文脈作りをしていくことは、インターネットで購買すること自体への信頼を獲得していくことに繋がると私達は考えています。
そのような商品との出会いは価格以上の価値があるでしょう。長らく価格競争に巻き込まれ続けた小売業界は、奇しくもインターネットというチャネルによって専門店と身近なプロたちを復権し、コミュニケーションと適正価格を取り戻しつつあり、現在はその黎明期であると言えます。
SINGULIERがやりたいことは、インターネット・コマーステクノロジーという手段を駆使し、この身近なプロたちの仕事を再生し流通させることです。それはつまり、資本力の大小や安売りや無責任な匿名性を超え、本当に手間暇をかけて仕上げられた商品の価値を伝えるべき人に伝え、買い手と売り手の出会いづくりの場をカタチづくることなのです。
- キュレーターとは、博物館・美術館などの展覧会の企画・構成・運営などをつかさどる専門職のことで、広義で、独自の観点から作品を集め展開する専門家のこと。ここでは、該当ジャンルに責任を持たない素人や有名人が行うことはキュレーションではないと私達は解釈しています。詳しくは、こちらの弊社記事をご覧ください。
CORE VALUE 〜 何のためにやるのか
購買理由を「安さ」から「本物の価値とセンスの認知」へ転換し、消費を加速する
私達は何のために身近なプロたちの仕事を再生する必要があるのでしょうか。
日本では1998年以来、長きにわたってデフレーションが続いていると言われています。物価は下がり続け、当然、労働者報酬も下がり続け、それにより買い控えや安売り競争が繰り返されます。この負のスパイラルが続くと、国債もどんどん値を吊り上げ、国家レベルで経済的に困窮化していきます。そこで、安倍政権はアベノミクスを唱え、ゼロ金利政策や量的緩和等の通貨レベルの施策や法人税引き下げ等の雇用側への優遇措置を行ってきましたが、それで労働者の賃上げにつながったとしても、消費行動自体を活性化させるような施策が無い限り、結局は銀行口座に蓄えられる預貯金の額が大きくなるだけではないでしょうか。
もちろん、消費者の消費行動を活性化させるのは、売り手の仕事でしょう。購買転換を価格だけに頼るのではなく、商品の付加価値を訴求し、価格以外の魅力で購買転換を促していく必要があります。預貯金をただ増やすことよりも、消費したくなるような魅力的なモノヅクリ、コトヅクリが必要なのです。それは、雑誌というメディアが昔からずっとやってきたことで、それと同様のことが小売にも求められるようになってきたのだと感じております。
そこで、SINGULIERはブランドや商品の本物の価値とセンスを伝えられるべき相手に伝え、消費の活性化に寄与することをミッションとしました。私達は、偽物や大量規格品では満足できない買い手を増やし、一人ひとりの消費行動の促進こそが、日本経済の底上げに寄与すると確信しています。そのためには、可処分所得を増やすだけでは不十分で、モノやコトを需要する喜びを知ってもらい、だからこそまた欲望する、その反復こそが必要です。
ミクロな共犯関係が複数化する社会へ
自社のブランドや商品のストーリーを語り、お客様との文脈づくりを行える編集社のような小売が多く現れはじめるとどのようなことになるでしょうか。
私達が理想とする在り方は、消費行動を通じて、売り手と買い手の関係性がコミュニティ化することであり、そういったコミュニティが複数化する社会です。もちろん、地方と都心の情報感度の差として現れているように、地域的に局所化したコミュニティは顧客が限定されるため、人間関係の「しがらみ」自体が購買転換理由になってしまい、商品クオリティに対する競争力が停滞し、井の中の蛙の状態でとどまりがちです。しかし、インターネットというチャネルを含めたコミュニティであれば、顧客は格段に広がるため、売り手側の商品開発努力は不可欠になるはずです。
ただし、インターネットだからといって、それがグローバルであったり、透明でオープンであったりする必要は必ずしも無い、むしろそうあってはいけないとすら考えています。小売が価格以上の付加価値を持つためには、”適正な差別”が必要だからです。一見のお客様とお得意様は、明確に差別されるべきでしょう。お得意様に対する付加価値は透明というよりは隠蔽されるべきでしょうし、そうすることにより「アナタだけ」という特別感を演出すべきです。「LTV(Life Time Value : 顧客生涯価値)」(注1)を引き上げてお得意様になっていただくことは、”クチコミ”という「アクティベーション(Activation)」(注2)を最大化することと同義になるに違いありません。
ローカルであるにもかかわらず、地域に限定されず、売り手と買い手の相互努力によって成長する共犯的なコミュニティ。インターネットとローカルコミュニティの出会いはこういった在り方を実現するでしょうし、本物の技術や創造性が受け継がれる社会に寄与するでしょう。本来、インターネットというチャネルは、画一化のためにあるのではなく、多様性を多様のまま共存させるためにあるはずです。というのは、World Wide Webというのは元々、目の前の関係を飛び越え、コミュニケーションを加速するための装置として考案されたものだからです。
WEBは、技術的な創造というよりも社会的な創造である。私は、社会的な効果のために、つまり人々の交流を助けるためにWEBを設計した。専門家のおもちゃを作ったわけではない。WEBの究極的な目標は、私達のWEB的な在り方を支援し、向上させることだ。WEBは、家族、団体、企業に入り込む。遠く離れた人々の間に信頼を、すぐ目の前にいる人々の間に不信を生み出す。『Weaving the Web』ティム・バーナーズ=リー
小売におけるインターネット利用を最適化すること、それは、売り手と買い手の共犯関係を増殖させ、安売りに依らない適正価格消費を加速化し、日本経済の底上げに寄与すると私達は信じています。
SINGULIERの存在意義は、まさにここにあるのです。
代表取締役社長 兼 最高技術責任者 兼 社内哲学者
和泉 裕臣
- LTVとは、Life Time Valueの略語であり、一人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらす利益(価値)のこと。
- アクティベーションとは、売り手のプロモーションに対して、買い手自身の商品やブランド、売り手に対する行動のこと。会員登録も購入もシェアもクチコミもアクティベーションの一貫である。